涼しくて、気持ちのよい景色を増やす。
栃木県佐野市|住宅・店舗・事業所の外空間づくり
Coolscapeには、Green・Mist・Smartという3つの仕組みがあります。
その中でGreenが担うのは、単に空間を緑で美しくすることではありません。
もちろん、植物のある景色には、自然を身近に感じさせたり、季節の変化を楽しませたり、空間の印象を柔らかくしたりする魅力があります。
でも、CoolscapeがGreenに期待している大きな役割は、「涼しさを感じられる環境をつくること」です。
自宅のアプローチでは、実際に植物を植え、夏の日差しや風、ミストの当たり方を観察しながら、その効果を確かめてきました。
その植栽で最初から意識していたのが、上層・中層・下層・地表という4つのレイヤーです。

上層で木陰をつくり、中層では植物の蒸散を活かす。下層では風の動きを目や耳でも感じられるようにし、地表では植物で地面を覆い、地表の蓄熱や放射熱を抑える。
それぞれ違う方法で、涼しさにつながる環境をつくっていくという考え方です。
ただ、考え方があっても、最初からその形が完成していたわけではありません。
植えてみて、立ってみて、時には枯れてしまった植物もある。
日差しや風、植物の育ち方を見ながら、そのたびに「なぜだろう」と考える。
CoolscapeのGreenは、この考え方を軸にしながら、そんな試行錯誤を重ねて形にしてきました。
4つのレイヤーの中で、上層に求めたのは、木陰をつくることです。
ただ、一口に木陰といっても、その表情はさまざまです。
枝葉が密集して空がほとんど見えない暗い木陰もあれば、葉と葉の間から空が見え、木漏れ日が落ちる明るい木陰もあります。
Coolscapeでつくりたいのは、後者です。
日射は和らげながらも、光や風を完全には遮らない。鬱蒼とした場所ではなく、植栽として手入れされ、美しいと感じられる状態を保ちたい。そのため、単純に「葉をたくさん茂らせればいい」とは考えていません。
自宅のアプローチには、まず株立ちのアオダモと常緑のツツジを植えました。

アオダモを選んだ理由の一つは、その樹形です。夏の昼前後は太陽が高い位置にあるため、アプローチの上へ枝を広げる樹形なら、歩く場所に木陰をつくりやすいと考えました。
また、アオダモのような落葉樹であれば、夏には葉が日射を遮り、冬には落葉して日差しが入りやすくなります。
一方、アプローチの左側には常緑のツツジを配置しました。こちらは地面に近いところから人の背丈ほどまで枝葉があるため、夏の午後に横方向から入ってくる西日を遮る役割を期待しています。
ここまでは、ある程度狙った通りでした。地面を見ると、ちゃんと影が落ちています。「これなら木陰ができている」。最初はそう思いました。
でも、実際にその場所に立ってみて、ひとつ大きなことに気づきました。
地面には影があるのに、自分は木陰に入っていない。
特に朝です。太陽の位置が低いため、フェンスや植栽によって地面には長い影ができます。ところが、その影の高さは十分ではありません。
足元は日陰でも、顔や腕、胸元には日射が当たっている。
目で地面だけを見ていたときには、「影がある=涼しい場所ができている」と考えていました。でも、人が感じる環境として考えるなら、見るべきなのは地面に落ちる影だけではありませんでした。
そこで後から追加したのが、アオハダです。しかも、高さのある個体を選びました。
目的は影の面積を増やすことだけではなく、人の上半身まで木陰の中に入れることです。

実際に夏の日差しを観察しながら、木陰をつくるうえでは、樹種だけでなく、樹形、樹高、植える位置、そして時間によって変わる太陽の方向まで考えることが重要だと感じました。
アオダモは、高い位置から入る夏の日射に対して上から木陰をつくる。ツツジは、西側から入る低い日射を遮る。そして追加したアオハダは、朝の東側からの日射を和らげる。
同じ一本の木ですべてを解決しようとするのではなく、太陽の動きに合わせて、それぞれの植栽に役割を持たせる。
最初に描いた上層レイヤーの考え方を、自宅で実際に夏を過ごしながら、少しずつ具体化してきました。
木の下につくっているのが、中層レイヤーです。
中層には、クサソテツなどのシダ類を植えています。ここで狙っているのは、植物の蒸散です。
植物は根から吸い上げた水を葉から蒸散させます。水が水蒸気になる際には周囲から熱を奪います。Coolscapeでは、上層の木々がつくる木漏れ日の下に葉のある植物を重ねることで、この植物がもともと持っている働きを活かしたいと考えています。
シダ類を選んだ理由の一つは、木陰との相性です。直射日光の強い場所ではなく、木漏れ日の下で、なおかつミストが届きやすい場所に配置しています。
ただし、実際に自宅のシダが周辺の気温を何℃下げているかを測定したわけではありません。
そのため、シダ単体の効果を見るのではなく、木陰で日射を抑え、ミストで水分のある環境をつくり、そこに植物を重ねる。そうした組み合わせの中で、植物が本来持つ蒸散の働きを活かしたいと考えています。
そして、シダを入れたもう一つの理由があります。
空間に奥行きと、水の気配をつくることです。
木だけが立っている場所よりも、その下に異なる高さの植物が重なっている方が、自然の林床に近い複雑な景色になります。特にシダの葉は、ミストや水のある景色との相性がよく、木陰の中にしっとりとした印象を加えてくれます。
現在は小さめのクサソテツが中心ですが、今後はもう少し大きなオシダなども試してみたいと思っています。
中層をつくるという考え方は変えず、実際の生育を見ながら、植物の種類や配置を調整し、少しずつ厚みをつくっていく予定です。
その下にあるのが、カレックスを中心とした下層レイヤーです。
カレックスは細く長い葉を持ち、少しの風でも葉が揺れます。
ここで期待しているのは、温度を下げることそのものよりも、風を「見えるもの」にすることです。
ミストが出ているときに、そよ風がふわっとアプローチを抜ける。肌でその風を感じる。その瞬間、目の前のカレックスも揺れ、サラサラと葉が触れ合う音がする。

風そのものは目には見えません。でも植物が動くことで、「今、ここに風が通っている」ということを視覚でも感じられます。
実際にその場所に立ってみると、肌で感じる風だけの場合と、植物の動きや音が一緒にある場合では、受け取る印象が違うと感じました。
これは温度計に表れる効果ではなく、あくまで自宅で過ごす中で感じている体験としての涼しさです。Coolscapeでは、こうした人の感覚も大切にしています。
また、常緑のカレックスを混ぜることで、上層の落葉樹が葉を落とす冬にも足元には緑が残ります。一年を通した景観を考える上でも、下層には役割があります。
最後が、地表レイヤーです。
ここでは苔やサギゴケ、サギナなどを使っています。
今でこそ石の間に緑が入り始めていますが、このレイヤーは、試しながら分かってきたことが特に多い場所です。
最初に試した苔は、ハイゴケ、スギゴケ、スナゴケの3種類。
自動ミストがあるのだから、一般的な庭より苔を維持しやすいのではないか。そんな期待がありました。
実際に育ててみると、種類によって環境への反応がかなり違うことが分かりました。
ハイゴケは、ミストが当たっていても日射のある場所ではうまく定着しませんでした。スギゴケも同様でした。
そして最終的に状態よく残ったのが、スナゴケです。
ただし、スナゴケならどこでも大丈夫だったわけではありません。一番きれいな状態を維持できているのは、ミストが最もよく当たるエリアでした。
暑い時期には、一日水分が供給されないだけでも乾燥して、白っぽくパリパリした状態になることがあります。

この経験から少なくとも自宅の環境では、苔を美しい状態で維持するために、自動ミストが非常に重要だと感じています。
苔は環境の影響を受けやすい植物です。3種類を実際に植えてみることで、種類だけではなく、日射、木陰、水分、植える位置の組み合わせが重要なのだと改めて分かりました。
逆に言えば、条件を見ながら場所を選べば、暑い夏でも苔のある景色をつくれる可能性がある。
ミストで濡れたスナゴケに触れると、ひんやりとして、フカフカしています。目で見るだけでなく、指先でも水の気配や涼しさを感じられる場所になっています。
すべてを苔にすることにはこだわっていません。
苔が難しい場所では、環境に合わせて別のグラウンドカバーを使います。ミストが届きにくく、比較的日射のあるところにはサギゴケ。直接ミストが当たりにくくても、カレックスやシダによって日陰になる場所にはサギナ。
まだ経過を見ている段階ですが、その場所の条件に植物を合わせることを大切にしています。
また、土をむき出しにせずグラウンドカバーで覆うことには、雑草を抑えやすくする目的もあります。
もう一つ狙っているのが、地表の蓄熱と放射熱を抑えることです。
自宅ではサーモグラフィーを使って地表面温度を測定し、日射を直接受ける場所と、植物などで覆われた場所との温度差も確認しています。
上からの日射を木陰で遮るだけではなく、足元の地表が熱を持つことも抑える。地表まで含めて涼しさを考えることが、このレイヤーの役割です。
地表レイヤーでもう一つ、植物と同じくらいこだわったものがあります。
石畳です。
使ったのは、割栗石。形も大きさも揃っていません。表面もでこぼこしています。
そこで、手前側には比較的大きな石、奥へ行くほど小さな石を使いました。遠近感によって、短いアプローチを少し長く感じさせられないかと考えたからです。
実際にどこまでその効果があるのかは分かりません。でも、均一な舗装にはない奥行きは生まれたように感じています。
歩くと、石の凹凸を足の裏に感じます。完全に平らな舗装とは違って、少しだけ自然の中を歩いているような感覚があります。
もちろん、実際の設計では、使う人や場所に応じて歩きやすさや安全性とのバランスを考える必要があります。そのうえで、ここで狙ったのは「無秩序の中の秩序」です。
石の大きさも形も完全には揃っていない。植物も一直線には並んでいない。でも、放置されているわけでもない。
自然が持っている不均一さを残しながら、人の暮らしの中にきちんと収める。
僕にとっては、そのくらいのバランスが「自然と暮らしが調和している」状態です。
そして、この石畳には個人的な原体験があります。
イギリスで暮らしていた頃、古い石畳を何度も歩きました。
長い年月使われ、角が取れ、形も一つひとつ違う石が街の中に残っています。きれいなんです。
ただ、快適かと言われれば、必ずしもそうではありません。
酔って帰る夜に、何度足を挫いたか分かりません(笑)。
自転車で走ればガタガタして、乗り心地もはっきり言って良くない(笑)。
それでも、その石畳をすべて新しく平らな舗装に変えるのではなく、使い続けている街がある。
当時の僕には、そこに古いものや少し不便なものも含めて、暮らしの一部として大切にする文化があるように見えました。
もちろん、その不便さ自体を再現したいわけではありません。自然らしい不均一さは残しながら、暮らしの中で無理なく使えるように整える。そのバランスが大切だと考えています。
イギリスで見た石畳の景色がずっと印象に残っていて、「石畳っていいな」と思っていました。だから、自宅のアプローチにもその要素を取り入れました。
Coolscapeを始めるずっと前から残っていた感覚です。
実際に自宅で石畳をつくってみると、思いがけない表情もありました。
雨やミストを受けて石が濡れると、乾いているときよりも色や質感がはっきりします。特に夜、濡れた割栗石を照明が照らす景色は、とても気に入っています。

植物だけではなく、石、水、光によっても景色は変化する。
これも、つくってみて初めて気づいたことでした。
上層では、木陰をつくる。
中層では、植物の蒸散を活かす。
下層では、風を目や耳でも感じられるようにする。
地表では、植物で地面を覆い、蓄熱や放射熱を抑える。
木陰、蒸散、風、そして地表の熱。
それぞれ異なる方法で涼しさに働きかけながら、同時に、緑の美しさや奥行き、揺れ、質感をつくっていく。
Coolscapeでは、植栽を始めた当初から、この4つのレイヤーを意識してきました。
一方で、どんな植物を使うのか、どの高さや位置に配置するのか、ミストとどう組み合わせるのか。
それぞれのレイヤーの具体的なつくり方は、実際の環境で試しながら調整を続けています。
たとえば上層では、最初にアオダモとツツジを植えました。
地面にはしっかりと影ができましたが、実際にその場所に立ってみると、人の上半身までは十分に木陰に入っていないことに気づきました。
そこで、より高さのあるアオハダを追加しました。
地表では、「自動ミストがあれば苔も育つのではないか」と考え、3種類を試しました。
思うように育たないものもありましたが、観察を続けるうちに、スナゴケが育ちやすい場所と、ミストの当たり方との関係が少しずつ見えてきました。
シダについても、蒸散や見た目の涼しさをどう生かせるか、まだ試している途中です。
つまり、4つのレイヤーという考え方は最初からありました。
ただし、それぞれのレイヤーをどうつくれば、より涼しく、より美しく、植物にとっても無理のない環境になるのか。その答えは、今も探している途中です。
植えて、枯れて、育って、その場所に立ってみる。風を感じ、葉に触れてみる。
そうした試行錯誤を重ねながら、各レイヤーを少しずつ調整しています。
Green、Mist、そしてSmart。
それぞれを別々の仕組みとして考えるのではなく、植物が育ち、人が心地よく過ごせる一つの環境として組み合わせていく。
そして、その効果を自分たちの手で確かめながら、より良い形へ更新していく。
それが、今のCoolscapeが考えるGreenです。